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2021年度 学会発表

 

公立千歳科学技術大学院 理工学研究科 理工学専攻 渡邊 純平
公立千歳科学技術大学大学院 下村・平井研究室 修士1年の渡邊純平です。

合計2件の学会に参加しましたのでご報告いたします。
内訳は口頭発表の国内学会1件、ポスター発表の国際学会1件です。
研究内容等は情報開示できる範囲のみを報告いたします。

?参加学会

1.2021 年度日本付着生物学会総会・研究集会 (口頭発表)
[フジツボキプリス幼生着生時の表面官能基に対する選択性]
○渡邊純平 三上恵 室崎喬之 野方靖行 下村政嗣 平井悠司

2. The 9th International Symposium on Surface Science ~Toward Sustainable Development~(ISSS-9) (Poster presentation)
[Selectivity for surface functional groups in larvae of barnacles]
○Jumpei Watanabe, Kei Mikami, Takayuki Murosaki, Yasuyuki Nogata, Masatsugu Shimomura, Yuji Hirai.

?研究内容
 フジツボキプリス幼生における付着挙動の調査 
 海洋付着生物であるフジツボは船舶等に付着し、燃費を悪化させることや、火力発電所の取水口に付着することで発電効率を下げること、貝類の養殖を妨げるなどの様々な問題を引き起こす。かつては有機スズ系防汚塗料によって付着を阻害していたが海洋生物に対して内分泌かく乱作用があるとして現在は使用が禁止された。そのため低環境負荷で効果的な防汚材料の開発が必要とされている。そこで、表面化学組成をコントロールし、フジツボキプリス幼生の着生率を比較することによって、表面化学組成がどのように着生に影響を与えるのかを調査した。

?学会での取り組み
 日本付着生物学会での発表では付着生物のスペシャリストが集う場での発表であるため、フジツボについての説明より、行なった実験方法についてどのような意図を持って取り組んだのかを詳しく説明した。加えて、研究の今までとは異なる点について重点的に説明した。周りの研究発表よりフジツボ以外の付着生物に対しての知見を得ることができた。
 ISSS-9での発表は、あまり馴染みのないフジツボという生物に対しての説明に加えて、どのような問題でフジツボが海洋汚損に繋がるかを説明し、研究の発展性を示すことを意識した。また、オーラル発表等から本研究に応用できそうな研究報告等を知ることができた。

?アピール
 フジツボを実際に研究室内で飼育し、幼生を成長させて、着生試験を行なっているのは日本で約3カ所であり、その内の1カ所として他ではできないことができていると思います。昨年度は新型コロナウイルスの影響で大学に入ることができなくなり、フジツボの飼育等が上手く出来ずデータを得ることが難しかった1年でした。今年度はコロナに負けずより多くのデータを出し、学会発表等に繋がるよう、精一杯努力するつもりです。
また、今年度の3月と5月の国内学会に参加予定です。

渡邊


北海道大学大学院 工学院・機械宇宙工学専攻 三宅 冬馬
北海道大学大学院工学院機械宇宙工学専攻
計算流体工学研究室修士1年 三宅冬馬

・参加学会:Asia-Pacific International Symposium on Aerospace Technology 2021
・開催地 :韓国済州島(オンライン開催),2021年11月15-17日
・タイトル:「Numerical investigation of transonic flutter characteristics of a supercritical airfoil」

・概要
"フラッタ―について"
フラッタ―現象とは流体力(流体)-構造力(物体)-慣性力(物体)の3つの力が連成して生じる自励振動現象である.
フラッタ―は身近なところでも観察でき,「旗がはためく」,「窓のブラインドの風による振動」などがあげられる.
身近なフラッタ―では比較的大きな振動が発生しているが,航空機においても同様の振動現象が生じうる.
しかし,航空機における大振幅振動は翼の破壊など致命的なダメージを与えるため,起きてはいけない現象に分類される.

"研究目的"
航空機におけるフラッタ―現象は「従来の対称翼」(昔使われていた翼)に関しては,多くの実験,計算例が存在し,その特性
についての知見も多い.しかし,現在はその形状が大きく異なる「スーパークリティカル翼(SC翼)」が広く使われており,そのフラッタ―
特性に関する知見は不足している.従って,本研究では構造の条件は同一にした場合に,翼型形状の違いがフラッタ―特性にどのような
影響を及ぼすのかについて,流体現象に着目して調査した.

"計算手法"
本研究では流体の支配方程式として,レイノルズ平均された2次元圧縮性ナビエストークス方程式を用い,乱流モデルとして1方程式SAモデル
を採用した.構造の支配方程式は上下,回転方向にバネ支持された2自由度系を考え,その運動方程式を採用した.

"結果"(SC:スーパークリティカル,マッハ数:流体の速度/音速,遷音速:音速付近)
SC翼の2次元フラッタ―計算を行い,その形状効果について調査した.その結果,SC翼では従来の翼型でも知られていた,遷音速域におけるフラッター
に加えて,さらに高マッハ数側で急激な不安定性を示すことが分かった.2つ目の不安定性(2nd-dip)は過去に報告されておらず,新たな知見といえる.
また,定常状態(翼が静止した状態)と振動状態の計算を行い,2nd-dipの発生メカニズムについて調査した.
2nd-dipにおけるマッハ数では翼下面において小さな流れのはく離(流れが物体表面からはがれること)が生じていることが分かった.
また,翼の振動に伴い流れは「はく離ー付着」を繰り返し,その領域の空気力の位相は遅れる.空気力の位相が遅れると,流体側から構造側(翼)へ
エネルギーが受け渡されるため,系は不安定となる.その結果,急激な不安定性を示した.

・アピールポイント
@:スーパークリティカル翼において,よく知られていた遷音速域のフラッタ―に加えて,さらに高マッハ数側での急激な不安定性を発見した.
A:流れのはく離ー再付着に着目し,その発生メカニズムについて明らかにした.
B:一般的に,流れのはく離を伴う計算は難しく,実際の現象を模擬することが困難であるが,本研究ではSAモデルを用いて振動翼の計算を
  行い,衝撃波+はく離を含む流れ場においても,高精度に計算が可能であることを,実験との比較により担保した.
これらの知見,および計算法の確立は航空機設計に資するものであり,昨今の航空機の高速化に伴い,その重要性は増している.
今回の研究成果は現在論文としてまとめており,また,航空系としてはトップレベルの国際会議である「ICAS2022」にも申請中である.

※詳細については動画にまとめていますので,そちらをご覧ください.(short(5min), full(20min)を用意しています)
動画リンク:https://drive.google.com/drive/folders/1vmfz5DSlNdLXpSCPwGisrqPWODB3HCVX?usp=sharing


北海道大学 大学院総合化学院 総合化学専攻 生物化学コース 生物機能化学講座 高分子化学研究室 江部 陽
北海道大学大学院総合化学院 高分子化学研究室修士2年の江部 陽です。今年度 (2021年5月-11月)は6件の学会発表を行いましたのでご報告申し上げます。口頭発表3件、ポスター発表3件、受賞1件です。

■研究テーマについて
研究題目: 多環状ポリマーを用いたロタキサン架橋シリコーンゴムの調製

研究内容の概説: ロタキサン架橋は、線状成分 (線状高分子) が環状成分の内部に貫通した (ドーナツの中に棒が入ったような)ロタキサンを用いた架橋形態であり、加硫などの化学架橋を用いた高分子材料よりも力学特性を凌駕する (代表例: 東大・伊藤ら・スライドリングゲル)。しかし、既存のロタキサン架橋はロタキサン形成の原理上、特定の環状成分と線状高分子の組み合わせに限定されており、適用できる高分子種は非常に限られる。そこで本研究では、適用範囲の広い新規ロタキサン架橋構築法として、多環状高分子と線状高分子の組み合わせからなるロタキサン架橋に着眼した。具体的には、産業的に重要なシリコーンの原料であるポリジメチルシロキサン (PDMS) を対象の高分子種とした。合成した多環状PDMSをシリコーンゴム調製の際にブレンドし、ロタキサン架橋シリコーンゴムを調製した。学会発表では以下に示す通り、本研究の進捗に応じて学会発表を行った。

■参加学会のまとめ
◇国内学会における口頭発表 ・・・計 3 件
1. ○江部 陽・磯野拓也・山本拓矢・田島健次・今崎篤・丸林弘典・陣内浩司・佐藤敏文「多環状ポリマーを用いたロタキサン架橋シリコーンゴムの調製」第 32 回エラストマー討論会、A12、九州大学伊都キャンパス、2021 年 11 月

2. ○江部 陽・藤原魁佑・Brian J. Ree・磯野拓也・山本拓矢・田島健次・丸林弘典・陣内浩司・佐藤敏文「環状高分子―線状高分子ロタキサン架橋によるシリコーンゴムの強化法」第 70 回高分子討論会、1O17、オンライン開催、2021 年 9 月

3. ○江部 陽・藤原魁佑・Brian J. Ree・磯野拓也・山本拓矢・田島健次・丸林弘典・陣内浩司・佐藤敏文「多環状ポリマーの添加によるシリコーンゴムの力学特性改善」日本化学会北海道支部 2021 年夏季研究発表会、A01、オンライン開催、2021 年 7 月

◇国内学会におけるポスター発表 ・・・計 3 件
4. ○江部 陽・藤原魁佑・Brian J. Ree・磯野拓也・山本拓矢・田島健次・丸林弘典・陣内浩司・佐藤敏文
「多環状高分子を活用したロタキサン架橋によるシリコーンゴムの調製と力学特性評価」第 11 回 CSJ 化学フェスタ 2021、P2-076、オンライン開催、2021 年 10 月

5. ○江部 陽・藤原魁佑・Brian J. Ree・磯野拓也・山本拓矢・田島健次・佐藤敏文「多環状ポリマーのブレンドによるシリコーンゴムの力学特性強化」第 7 回北大・部局横断シンポジウム 新領域創成に向けた若手連携の形成、オンライン開催、2021 年 10 月 (ベストポスター賞受賞)

6. ○江部 陽・藤原魁佑・Brian J. Ree・磯野拓也・田島健次・丸林弘典・陣内浩司・佐藤敏文「多環状ポリマー混合シリコーンゴムの調製と物性評価」 第 70 回高分子学会年次大会、1Pe007、オンライン開催、2021 年 5 月

■各学会発表におけるまとめ
まず、今年度最初の学会発表は6.の高分子学会年次大会である。本発表ではこれまで報告されていない多環状PDMSの合成についてまとめ、これをブレンドしたシリコーンゴムがゴムの力学特性向上に有用であることをポスターにて発表した。

次に、3.の発表では口頭発表を行った。大まかな内容は6.と同様であるが、主催は日本化学会であり、6.の高分子学会よりもわかりやすく説明することが求められた。

2.の口頭発表では、多環状PDMSのほかにグラフト化PDMSについても合成を行い、それぞれをブレンドした際のシリコーンゴムの力学特性に対して評価を行った。本発表は東北大学との共同研究で行った詳細な解析を新たに発表しており、盛んに討論を行った。

5.の発表ではSDGSと絡めたポスター発表を行った。本研究で行っているロタキサン架橋は化学架橋と異なりリサイクル可能性があることに着目し、持続可能なモノづくりについて発表を行った。その結果、ベストポスター賞を獲得した。

4.のCSJ化学フェスタの主催は3.と同様に日本化学会であるため、わかりやすい説明が重視される。ポスター発表にて企業の研究者と盛んに議論を行い、今後の研究展開に必要な知見を得ることができた。

最後に、1.のエラストマー討論会は、九州大学にて口頭発表を行った。エラストマー討論会の主催は日本ゴム協会であり、北海道大学含め道内からは唯一の発表者として登壇した。日本ゴム協会は多くの企業研究者、すなわちゴムのプロフェッショナルが集まっており、彼らから多くの知見を得るため当研究室で初めての発表を行った。研究内容としては、新たにシリコーンゴムの溶出試験を発表した。これは多環状PDMSがシリコーンゴム内で捕捉され、ロタキサンを形成していることの証明となった。現地学会ならではの議論や交流を進んで行い、ほかの先生方の発表後にはディスカッションを行うなど、非常に有意義な時間を過ごすことができた。


その他のアピール点
1.エラストマー討論会の発表内容にあるシリコーンゴムの洗い出し試験については、動力学シミュレーションとの相関がとれており、現在論文投稿中である(査読付き国際誌 Polymer; IF 4.430)。

2.本研究は2021年1月の第55回高分子学会北海道支部研究発表会においても優秀ポスター賞を受賞している(https://spsj.or.jp/branch/hokkaido/event-03/)。今年度においても引き続きポスター賞を受賞した点から、本研究が新たな着眼点に基づく挑戦的研究として評価され続けていると考えられる。

3.学会発表を7か月の間に6件行ったのは研究室内で最多であり、新たな知見を学会発表にて議論しようとする姿勢に基づいたものであると言える。また、本研究をさらに広範に広げたものテーマについて、日本学術振興会DC1と北海道大学アンビシャス博士人材(情報・AI)に申請し、後者の採択が内定している。

なお、別テーマですが修士論文は秘匿性を含む共同研究のため記述を控えせせて頂きます。来年度、論文投稿後に発表を行う予定です。

江部


公立千歳科学技術大学大学院 理工学研究科 理工学専攻 辻岡 一眞
公立千歳科学技術大学大学院 下村・平井研究室 修士2年の辻岡です。

今年度、2つの研究テーマで合計6件の学会に参加しましたのでご報告いたします。内訳は国際学会4件(口頭2件, ポスター2件)、国内学会2件(ポスター2件)です。その中で国際、国内学会で1件づつ合計2件ポスター賞を受賞しました。また、発表内容が査読付き国際学術論文誌、及び学会機関紙に一報づつ掲載され、研究テーマを進展させた内容が北海道大学のプログラムに採択されました。
※学会発表及び受賞はすべて私自身が研究を行い、代表として発表、応募したもののみです。
※研究内容等は守秘義務の観点からすでに情報開示しているもののみ記載しています。

【研究テーマ 1】
<タイトル>
ウバウオ吸盤の粘液と毛状構造に学ぶ新規接着メカニズム

<内容>
 ウバウオは接着力が生まれづらい水中でも腹部の吸盤によって非常に強力(自身の体重の80~230倍)かつ可逆的に接着可能な魚である。このウバウオの吸盤には粘液に覆われたナノ・マイクロスケールの毛状構造があり、ウバウオの優れた接着特性はこの粘液と毛状構造によるものであると考えられていたがその機能は不明瞭であった。そこで私は、強力な接着に必要とされる柔らかさ(接触面積増加=接着力生成)と硬さ(剥離に対する抵抗)の両立を、ウバウオは柔らかい粘液と硬い毛状構造で達成していると考えた。この接着メカニズムは今まで報告されていない新たなメカニズムであり、この接着原理が実証されればそれを模倣した機能性接着材料研究・開発に大きく貢献できる可能性がある。実際に接着力試験と有限要素法シミュレーションの2つの観点で検証を行ったところ、柔らかさと硬さの両立は柔らかい粘液と硬い毛状構造により達成可能であり、構造を模倣することで人工材料でも高い接着力が得られ繰り返し接着可能であったため成果を学会で報告した。

<参加学会>
1. 第70回高分子討論会 (国内ポスター)
[タイトル等]
○辻岡一眞, 松尾 保孝, 平井悠司, 下村政嗣. “有限要素法シミュレーションを用いたウバウオ接着メカニズムの解明”, 2Pe067, オンライン, 2021/9/6~8, 2021/9/7, 優秀ポスター賞受賞.
[学会の詳細]
 高分子学会討論会は国内学会でありながら全国各地から約1,900件以上の研究発表やレビュー、招待、受賞講演が行われ、発表テーマにバイオミメティクス分野が存在する学会の中では最大級である。発表テーマは生物模倣に限らず高分子化学・構造・物理・機能(合成・反応・基礎物性・高機能化), 医療, 環境, 工業など非常に多岐にわたる。
 この発表テーマは上記のウバウオの接着メカニズムを有限要素法シミュレーションによって検証したものである。得られた結果をポスターで発表したところ、複数の研究者達に評価され優秀ポスター賞を頂いた。

2. 21st Chitose International Forum on Science & Technology (CIF21), (国際ポスター)
[タイトル等]
○Kazuma Tsujioka, Yasutaka Matsuo, Yuji Hirai, Masatsugu Shimomura, "The effect of the deformation stress dispersion to the nanofilaments for strong adhesion in clingfish", P-11, Chitose (CIST), 2021/10/15, POSTER AWARD
[学会の詳細]
 この学会は材料、デバイス、ICTシステム、およびそれらの応用など、科学技術の幅広い分野に関する国際学会である。自身の所属する千歳科技大の学生のほか、帝京大、北海道大など各地から研究者が集い発表を行う。
 この発表テーマは先程の研究成果で明らかとなった毛状構造の機能を更に詳しく追求したものである。得られた結果をポスターで発表したところ、それらが評価されPOSTER AWARDを頂いた。

3. 34th International Microprocesses and Nanotechnology Conference (MNC2021) (国際口頭)
[タイトル等]
○Kazuma Tsujioka, Yasutaka Matsuo, Yuji Hirai, Masatsugu Shimomura, "A new adhesive mechanism learning from the nanofilaments and mucus of a clingfish sucker", , 29A-5-2, online , 2021/10/26~29, 2021/10/29, 査読あり.
[学会の詳細]
 この学会は応用物理学会主催のもと微細加工、半導体技術、ナノテクノロジーなどに加えて自身の研究分野であるバイオミメティクス関連の研究者が集まる国際学会である。会議参加者は15カ国・地域を超え数百名に達し、要旨(論文)投稿時に厳格な査読が存在する。
 この発表テーマは上記のウバウオの接着メカニズムを模倣構造の接着力試験と有限要素法シミュレーションの2つの視点によって検証したものである。バイオミメティクス関連のセッションで口頭発表を行った。

4. The International Chemical Congress of Pacific Basin Societies 2021(Pacifichem 2021) (国際ポスター)
[タイトル等]
○Kazuma Tsujioka, Yuji Hirai, Masatsugu Shimomura, "Investigation of the influence of the clingfish sucker nanofilament on adhesion", online, 2021/12/16~21, 2021/12/20.
[学会の詳細]
 この学会は日本、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、韓国、中国の7化学会の共同主催で開催され、前回のPACIFICHEM 2015で18,000件を超える講演が行われた規模の非常に大きい国際学会である。
 この発表テーマは模倣構造内部の毛状構造が接着力に及ぼす影響を調べたものである。また原理的な検証だけでなく、接着材料としての機能性も調査した。

<本研究の重要性>
 生物の接着原理を知ることは産業、学術の両方の領域において重要である。まず産業の視点から見ると、接着材料は日用品、建築、医療など様々な場所で用いられているが、近年では優れた接着特性を有する生物に学ぶ新規接着材料に関する研究が数多く報告されている。しかし、これまでの生物模倣分野における接着材料はヤモリを模倣したgecko tapeに代表されるように毛状構造による接触面積や摩擦力の増加を利用したものがほとんどであった。それに対し、本研究では既存のメカニズムとは全く異なる粘液と微細構造による柔らかさと硬さの両立という新しいコンセプトによって高い接着力を生じさせた。この接着原理を利用すれば構造により粘液模倣部分の接着力を強化できるため、優れた特性(水中接着性、生体適合性、透湿性、導電性)を持つ材料に接着力を新たに付与できる。実際に本研究で用いた粘液模倣材料は水中接着性を示すが、毛状構造を内部に埋め込み模倣材料としても水中接着性を損なうことなく高い接着力を示した。本研究で抽出した接着原理を利用すると、様々な状態、環境下でも繰り返し使用可能な粘着テープ、ウエアラブルデバイス、優れた特性を兼ね備えた医療接着材料等が作製できる可能性があり、その波及効果は計り知れない。
 また、サイエンスの分野から見ても本研究は価値があるものであると考える。私が研究を行ったウバウオに学ぶ接着メカニズムは生物分野で周知である粘液と毛状構造の組み合わせと接着分野の基本である柔らかさと硬さの両立を融合させたものであり、これは一般的な接着剤やヤモリ、イガイ、カタツムリ、甲虫などの模倣接着材料研究でも未だ報告されていない新しい接着原理である。だが、毛状構造と粘液を持つ生き物は他にもタコ、イソギンチャク、プラナリア、一部の昆虫など多岐にわたる。これらの生物の毛状構造と粘液の機能は未だに不明瞭であったが、ウバウオの接着メカニズムの研究が進めばそれらの生き物の接着メカニズム解明に貢献でき、生物の環境への適応方法、歴史、種族ごとの相違点などが明らかとなる可能性がある。そのため、本研究で得られた成果は異分野の発展とその融合に寄与し、新たな研究領域の創出に貢献するものであると考える。

<アピール点>
1. これらの発表内容は、査読付き国際学術論文誌、及び学会機関紙に掲載された。
・Kazuma Tsujioka, Yasutaka Matsuo, Masatsugu Shimomura, and Yuji Hirai, “A new concept for an adhesive material inspired by clingfish sucker nanofilaments”, Langmuir, 2022, 38, 3, 1215?1222, 査読付き国際学術論文,
https://doi.org/10.1021/acs.langmuir.1c02972
・平井悠司, 辻岡一眞, "ウバウオの吸盤に学ぶ接着材料", 高分子(高分子学会出版), 70巻 7月号 p365-366, 2021, 学会機関紙,
https://main.spsj.or.jp/c5/kobunshi/kobu2021/2107.html#365.
 今回掲載されたLangmuirは2020年時点でのインパクトファクターが3.825, SCImago Journal Rank(SJR, 学術雑誌の科学的影響力の尺度)が1.042でSurface and Interface分野では世界で第9位であり、世界的に影響力の大きい雑誌である。

2. 今年度、以下の国際・国内学会でポスター賞を受賞した。
・21st Chitose International Forum on Science & Technology (CIF21), POSTER AWARD
・第70回高分子学会討論会, 優秀ポスター賞受賞,
https://main.spsj.or.jp/tohron/70tohron/posteraward.pdf
 高分子学会討論会のポスター発表では多岐にわたる分野の企業、大学所属の研究者が評価を行うのでこの学会での賞の受賞は異分野の研究者、あるいは産業分野からの評価を意味する。また国際学会のCIF21も理工学であれば分野を問わない学会である。

3. 同様の研究テーマについて、昨年度も含めて複数の国際・国内学会での発表が実現した。
 国際学会3件(口頭1件, ポスター2件)、国内学会2件(口頭1件, ポスター1件)
 これらのような複数の学会での発表・採択に至ったことは研究成果が高く評価されていることを示していると考える。

4. 同様の研究テーマを進展させた内容が北海道?学スマート物質科学を拓くアンビシャスプログラム(SMatS)に採択され、現在はDX博士人材フェローシップにも申請中である。
 このことは研究がさらなる発展の可能性を秘めていることを示している。


【研究テーマ 2】
<タイトル>
セルロースナノクリスタル(CNC)とキトサンを用いた低環境負荷包装材料の作製

<内容>
 プラスチック包装材料による海洋汚染問題は早期に解決しなくてはならない人類の共通課題である。そのため近年では生分解性と機能性を有する生物由来の材料を用いた包装材が注目されている。その中でも私は持続可能性と材料特性(生分解性、機械的特性、バリア性)を兼ね備えたCNC/キトサンコンポジットフィルムに着目した。この研究ではCNC/キトサンコンポジットフィルムの弱点を解決し、食品包装に必要な機能を兼ね備えたCNC/キトサンコンポジットフィルムを作製したので学会にて報告した。

<参加学会>
1. 第 70 回高分子学会年次大会 (国内ポスター)
[タイトル等]
○辻岡一眞, 平井悠司, 下村政嗣. “透明性、高い材料強度、シール性を有するセルロースナノクリスタル/キトサンコンポジットフィルム”, 2Pd072, オンライン, 2021/5/26~28, 2021/5/27.
[学会の詳細]
 高分子学会年次大会は毎年5月に約4,000人の会員が参加して開かれ、最近では2,200件を超えるオリジナルな研究発表が行われる最大規模の研究集会である。討論会と同様に発表テーマは非常に多岐にわたり、学生を含め各企業、大学所属の研究者が全国から集う。
 この発表テーマは自身が作製したフィルムの特性評価を行ったものである。得られた結果はポスターにて発表した。

2. 21st Chitose International Forum on Science & Technology (CIF21) (国際口頭)
[タイトル等]
○Kazuma Tsujioka, Yuji Hirai, Masatsugu Shimomura, "Characterization of hydrochloric acid hydrolyzed Cellulose Nanocrystal (CNC) / Chitosan composite film", Session 2, Chitose (CIST), 2021/10/15.
[学会の詳細]
 この学会は材料、デバイス、ICTシステム、およびそれらの応用など、科学技術の幅広い分野に関する国際学会である。自身の所属する千歳科技大の学生のほか、帝京大、北海道大など各地から研究者が集い発表を行う。私は分野の異なるテーマを複数行っていたため異なる発表形式で同日に発表した。
 この発表テーマは塩酸加水分解して作製したCNCを用いたコンポジットフィルムの特性評価を行ったものである。得られた結果は口頭にて発表した。

<本研究の重要性>
 環境に配慮したものづくりは人類の今後の繁栄のためには必要不可欠であるとされる。この数十年間の人類の産業、あるいは経済の発展は目覚ましいが、それに伴い人類の資源消費も爆発的に増加したため様々な環境破壊が起こり、それが最終的に人類の経済基盤、ひいては生存基盤を脅かしているとされる。特にプラスチック包装材料等による海洋汚染はSDGsの項目内でも述べられているように早急に解決しなくてはいけない人類の共通課題である。そのため生分解性などの機能を有する低環境負荷な包装材料の開発が世界中で進められており、その中でも生物由来の材料は優れた機能と生分解性を有しているため注目を集めている。しかし、実用化にはまだまだ多くの課題が存在し、その中でも特に問題視されているのが製造過程の課題(作製の困難さ、コスト)とプラスチック材料と比較した場合の機能性の欠如である。本研究ではそれらの課題を解決し、包装材料に必要とされる機能を兼ね備えることに成功している。特に今回用いたCNC/キトサンコンポジットフィルムは抗菌性、ガスバリア性、高い生分解性、安全性を有しているため以前よりプラスチック代替材料として着目されてきた。近年ではKitKatのネスレが紙包装を用いたり、スターバックスで紙ストローが導入されるなど世界で低環境負荷な生物由来の材料は実用段階に入っている。この研究で得られた知見を用いれば研究室レベルではなく産業レベルにまで発展できる可能性がある。
 また、本研究のCNC/キトサンコンポジットフィルムがもたらす恩恵は環境分野に限ったものではなく、経済にも影響を与える。CNCは植物由来の製品であり、現在ではカナダのCelluForce社がCNCを工場生産しているが、樹木等の自然資源の多い日本がCNC事業に参入すれば資源大国となれると言われている。また、CNCは中古の布団の綿などからも作製できることがわかっているため廃棄物を資源利用できる可能性がある。これはキトサンも同様であり、キトサンはカニ殻などから抽出されるキチンから得られる高分子であるが、世界では食用などに用いられる甲殻類の重量の約75%が副産物として廃棄されると言われている。もしキトサンが資源として使用される場合、本来廃棄物となる殻を半永久的に産業的に利用することが可能となり、甲殻類を日常的に食す文化のある日本、特に北海道ではその恩恵は計り知れない。

<アピール点>
1. 同様の研究テーマについて、これまでに複数の国際・国内学会での発表が実現した。
国際学会2件(口頭2件)、国内学会3件(ポスター3件)
 これらのような複数の学会での発表・採択に至ったことは研究成果が高く評価されていることを示していると考える。

2. これらの発表内容は、査読付き国際学術論文誌に掲載を目指し、現在執筆準備中である。


【学会に参加することで得られたこと】
 私は子供の頃より生き物の持つ機能や構造の不思議に興味を持っており、高校卒業後、それらを学問としたバイオミメティクス(生物模倣)の研究をするために公立千歳科学技術大学に入学した。研究室配属後の学部生時代には研究テーマ2の低環境負荷包装材料の研究を行い、学会にも参加していたがはじめは研究内容を正確に伝えることに難を感じていた。だが、奨学財団での活動や学会発表を通して他の学生から文章の組み立てや話し方を学ぶことで徐々に改善されていった。大学院進学後、新たに行ったテーマが今回学会で報告したウバウオ接着メカニズムの研究であり、内容はまさしく自身がやりたかった生物模倣に大きく関わるものであった。これまでの経験に加え指導教員や研究室メンバーの支えもあり、上記の様な様々な学会で自身の望むような発表を行うことが可能となり、論文の受理やポスター賞もいただくことができた。このような学会での経験から大学、大学院進学にあたり目標としていたものが1つ達成された。また自分は卒業後博士課程に進学するが、そこではウバウオ接着材料の研究を更に進めるとともに新たな生物模倣材料研究、低環境負荷材料研究を行っていく予定である。このとき今回報告した学会などで得られた結果や経験をもちいてスムーズに研究を進めていきたい。

辻岡


北海道大学大学院 機械宇宙工学専攻 三輪 拓実
北海道大学大学院工学院修士2年の三輪拓実です。
本年度の学会報告を致します。

本年度は国際学会1件に出席致しました。

【学会】
Asia Pacific Conference on Combustion

【題目】
The Controlling Parameter for the Flame Traveling Velocity of the Stabilized Combustion

内容を簡単に説明した5分程度の動画を作成致しました。
下記リンクからご覧いただけます。
https://drive.google.com/file/d/1FgcBMxKL-754_xpF4tv7A2-v1fCXUFXx/view?usp=sharing

また、発表内容の要約も作成致しました。
下記リンクからご覧いただけます。
https://docs.google.com/document/d/1WyGZ4Sb_NAY_jXnHjqnaJepf44PbajlB/edit?usp=sharing&ouid=109062503287889674741&rtpof=true&sd=true


北海道大学 工学部機械知能工学科 内垣 雄介
北海道大学工学部4年の内垣雄介です.
本年度の学会報告を致します.

1. 日本マイクログラビティ応用学会 第33回学術講演会 (JASMAC-33) 毛利ポスターセッション
【開催】
2021年10月13日~15日(オンライン開催)
【題目】
宇宙火災安全性向上に向けた電子回路基板材料の試験片形状確定に向けた研究
【著者】
内垣雄介,金野佑亮,橋本望,藤田修
【概要】
宇宙火災安全性向上に向けたISSにおける固体材料燃焼研究(FLARE)の後継としてFLARE2プロジェクトの準備が進行している.そのなかで著者らは電子回路基板材料の燃焼性評価を行う計画である.現在の矩形試験片および保持方法には熱膨張による湾曲という問題点がある.そのため,本研究では試験片形状改良の検討を行った.
【受賞】
毛利ポスターセッション 奨励賞

2. 日本機械学会 熱工学コンファレンス2021 (第三者著者としての共著)
【開催】
2021年10月9日,10日(オンライン開催)
【題目】
プリント基板上の下方燃え拡がりに関する実験的検討−試料側面と試料ホルダーの間隙距離が燃え拡がり速度と限界酸素濃度に及ぼす影響−
【著者】
金野佑亮,田口修一郎,内垣雄介,橋本望,藤田修
【概要】
プリント基板の火炎伝播現象に及ぼす試料保持方法の影響について検討した。プリント基板上の理想的な二次元燃え拡がりを実現するために,試料の両側面と試料ホルダ壁面との間に空間を設けた。空間を設けることにより,試料からホルダへの熱損失を低減することができるが,空間の大きさが大きくなりすぎると,端部伝搬が発生するようになった。最適な間隙距離の大きさを決定するために,間隙距離の大きさを変化させて,火炎前面形状,燃え拡がり速度,限界酸素濃度を測定した.

3. 日本機械学会 北海道学生会 第51回学生員卒業研究発表講演会 (出席予定)
【開催】
2022年3月5日(オンライン開催)
【題目】
複合平板試料の下方燃え拡がり現象に関する実験的検討 -試料ホルダーによる試料側面の挟み込み幅の違いが燃え拡がりに及ぼす影響-
【著者】
内垣雄介,金野佑亮,橋本望,藤田修

以上,本年度は国内学会1件,共著で国内学会1件に参加いたしました.3月に国内学会1件参加予定です.